トルコリラは今後どうなる？ウクライナ情勢から読み解く5つのリスク

2025/06/28

トルコリラの今後が気になるあなたへ

トルコリラの急激な下落や政情不安を受けて、「これからどうなるのか？」と不安を感じている方は多いのではないでしょうか。投資先としての魅力がある一方で、リスクの高い通貨としても知られるトルコリラ。その将来性を正しく見極めるには、世界情勢や経済データを総合的に把握することが欠かせません。

特に注目すべきは、ロシアとウクライナの対立がトルコ経済に与える影響です。実際に、2022年以降の戦争激化により、トルコリラは約30％以上の下落を記録しました。このような外的要因は、今後も通貨価値と株価に直接作用してくる可能性があります。

「なぜここまで下がったのか」「どうして他国よりも影響が大きいのか」――そうした疑問に応えるために、本記事ではトルコリラのリスク要因を丁寧に分析しています。

これから紹介する内容を通じて、投資判断の参考となる客観的な視点を得てください。専門的な知識がなくても理解できるよう、できる限り平易な表現で解説しています。

この記事で分かること

トルコリラと株価の関係性と過去の事例
ウクライナ情勢がトルコ経済に与える影響
今後注視すべき5つのリスクとその背景
投資家がチェックすべき重要指標とデータ
リスクに備えた具体的な投資戦略の立て方

トルコリラと株価の関係性をおさらい

トルコリラが影響を与える株式市場とは

トルコリラの為替変動は、新興国市場やトルコに関係する企業の株価に大きく影響します。特に、建設・観光・エネルギー関連の銘柄は影響を受けやすい傾向にあります。

トルコ国内企業の収益構造がリラ建て中心
輸入コストの上昇が企業業績に影響
海外投資家のリスク回避による資金流出

通貨安が招く株価の変動メカニズム

通貨安が進むと、輸入コストの上昇やインフレの加速が企業利益を圧迫します。その結果、企業価値が下がり、株価の下落を招くケースが多く見られます。

要因	影響
為替の下落	輸入価格の上昇によるコスト増
インフレ率上昇	実質賃金の低下と消費減退
海外資本の流出	株価のボラティリティ拡大

過去のトルコリラ下落と株価の推移

2018年の通貨危機では、トルコリラが年初比で約40％下落しました。これにより、イスタンブール証券取引所（BIST）の主要指数は同年だけで約25％のマイナスとなりました。

2018年：トルコリラ年初1USD＝3.8→年末5.3
株式市場も大幅下落
外国人投資家の資金引き上げが原因

新興国通貨の投資リスクと株価相関

新興国通貨の不安定さは、投資リスクのひとつです。特にトルコリラは、地政学リスクや政治的要因に敏感な通貨として知られています。これにより、株価との連動性も高くなりがちです。

短期的な為替の乱高下により、株式投資でも大きな損失を抱えるリスクがあるため、注意が必要です。

株価との相関が強い業種・銘柄とは

トルコリラの変動と相関が強い銘柄としては、航空・銀行・建設などのセクターが挙げられます。これらは外国為替や輸入物資への依存度が高いため、為替影響を受けやすいのです。

ターキッシュエアラインズ：燃料費が為替に左右される
アクバンク：外貨建ての債務比率が高い
建設大手ENKA：建材の多くを輸入に依存

ウクライナ情勢がトルコ経済に与える影響

ロシア・ウクライナ戦争と地政学リスク

ウクライナ戦争の長期化は、トルコを含む周辺諸国にとって大きな地政学リスクとなっています。2022年以降、戦火の影響でトルコの通貨・株価に波及が見られ、投資家心理が冷え込む場面もありました。

ロシアとの経済的つながりが深いトルコ
NATO加盟国としての軍事的プレッシャー
地理的に紛争地に近く不安定化の恐れ

トルコのエネルギー依存と価格高騰リスク

トルコは天然ガスの約40%をロシアから輸入しています。戦争により、エネルギー価格が世界的に高騰し、輸入コストの増加が貿易赤字を拡大させています。

輸入元	割合（2023年）
ロシア	約40%
イラン	約17%
アゼルバイジャン	約21%

NATO加盟国としての立ち位置と外交的影響

トルコはNATO加盟国として、ロシアとの距離感に苦慮しています。戦争が始まって以降、西側諸国からの圧力とロシアとの経済関係の狭間で、外交的バランスが求められています。

スウェーデン・フィンランドのNATO加盟問題で注目
軍事支援と中立政策のジレンマ
経済制裁をめぐる対応の難しさ

食料品・農産物価格への波及効果

ウクライナは「世界の穀倉地帯」と呼ばれ、トルコもその恩恵を受けていました。しかし戦争によって、小麦・ひまわり油などの価格が高騰し、国内のインフレを加速させています。

2023年には食品価格が前年比35％上昇し、国民生活への影響が顕著となりました。

ウクライナ難民問題と国内経済の圧迫

トルコはすでにシリア難民を大量に受け入れており、ウクライナからの避難者の流入は社会保障・雇用・医療制度にも追加的な負担を与えています。

2023年時点で400万人超の難民を受け入れ中
地方都市の住宅需要増加と物価上昇
公的支出の拡大と財政圧迫

今後のトルコリラに影響を与える5つのリスクとは？

インフレ率の高止まりと中央銀行の対応

トルコのインフレ率は2023年末時点で約64.8％と、新興国の中でも非常に高水準です。物価上昇が続けば、実質金利がマイナスとなり、トルコリラの信頼性が低下します。

2023年CPI：前年比＋64.8％
食品・エネルギー価格の急騰が主因
インフレ目標（5％）を大きく上回る状態

政治不安とエルドアン政権の経済政策

トルコ政府の金融政策は、市場の常識とは異なる独自路線をとっています。特に、利下げを繰り返す姿勢に市場の不信感が強まっています。

年	政策金利（年末時点）
2021年	14.0％
2022年	9.0％
2023年	30.0％（一時的な急上昇）

外貨準備高の減少と信用不安

外貨準備高が減少すると、為替介入能力が制限されるため、リラの防衛力が弱まります。2023年中旬には純外貨準備がマイナス域に転落しました。

外貨準備：2023年5月時点で▲58億ドル
観光収入での補填にも限界あり
IMF支援要請の可能性も議論される

利上げか利下げか？金利政策の迷走

市場では「必要なときに利上げを行うべき」との声が強い一方、トルコ政府は逆行的な利下げを繰り返してきました。この不透明な政策が為替市場の混乱を引き起こす一因になっています。

投資家は政策変更のタイミングを正確に予測できず、リスクプレミアムが上乗せされます。

国際格付け会社の信用格下げリスク

トルコのソブリン格付けは、ムーディーズで「B3」、S&Pでは「B」と投資不適格（ジャンク）水準にあります。経済見通しが悪化すれば、さらなる格下げの可能性もあります。

格下げによって機関投資家の撤退が進む
外貨建て債務の調達コストが上昇
通貨価値と株価に連鎖的影響

トルコリラの過去の暴落事例とその背景

2018年通貨危機の発端と原因

2018年のトルコリラ暴落は、政治と金融政策の混乱が引き金でした。特に、当時のトルコ政府が中央銀行への介入姿勢を強めたことで、市場の信頼を大きく損ないました。

2018年1月：1ドル＝3.7リラ
2018年8月：1ドル＝7.2リラ（約2倍の下落）
エルドアン大統領の金利抑制発言が拍車をかけた

アメリカとの関係悪化が招いた市場混乱

当時、アメリカ人牧師の拘束をめぐって米国とトルコの外交関係が急速に悪化しました。これに対しアメリカは経済制裁を実施し、トルコ市場からの資本流出が加速しました。

政治問題が通貨暴落に直結するという、典型的な事例となりました。

トルコ中央銀行の対応と市場の反応

危機直後、中央銀行は利上げを決断し、政策金利を17.75％から24.00％へと大幅に引き上げました。しかし、対応の遅れと政府の圧力により、回復には時間を要しました。

月	政策金利（％）
2018年6月	17.75
2018年9月	24.00

投資家心理の冷え込みと資金流出

外国人投資家は、トルコ市場の予測不能性に懸念を強めました。事実、2018年下半期には海外資本が大量に流出し、株式市場も下落に転じました。

株価指数BIST 100は年間で約20％下落
為替ヘッジを持たない投資家の損失が拡大
格付け会社による格下げも実施

暴落後の回復までにかかった期間と要因

完全な回復には2年以上を要しました。観光収入の回復や中央銀行の政策修正、国際的な経済支援が下支えとなり、徐々に安定を取り戻しました。

2020年には1ドル＝7.0〜7.5リラで安定化
IMF支援は受けなかったが外貨スワップ協定で補填
観光業の回復が経常収支改善に寄与

トルコリラと株価の今後を占う注目指標とデータ

トルコCPI（消費者物価指数）の動向

消費者物価指数（CPI）はインフレの度合いを測る重要な指標です。2024年3月時点でCPIは前年比68.5％を記録しており、高止まりが続いています。

インフレ抑制に必要な政策の判断材料
利上げ・利下げ判断にも直結
購買力の低下が消費・株価に影響

中央銀行の会合スケジュールと発言内容

トルコ中央銀行の定例会合は月1回行われます。政策金利やインフレ見通しの発言内容は、株価とトルコリラの変動要因として注目されています。

開催月	政策金利（％）
2024年1月	42.5
2024年2月	45.0
2024年3月	45.0（据え置き）

政治イベント・選挙カレンダー

大統領選挙や地方選挙は政治の方向性を左右します。選挙結果次第で金融政策や対外姿勢が変わる可能性があるため、事前のチェックが重要です。

2024年地方選挙で与党の支持率が下落
選挙直後の政策変更リスクあり
市場は安定政権を好む傾向

外国人投資家の資金動向・買い越し情報

トルコ市場への資金流入出は、為替・株価の先行指標として利用されています。週次で公表される投資動向統計を活用することで、マーケットの潮目を把握できます。

買い越し＝トルコリラ上昇のサイン
売り越しが続くと為替が不安定化
リスク回避局面では資金流出傾向

IMFや世界銀行の経済見通しレポート

国際機関のレポートは、中立的かつ客観的な視点からトルコ経済を分析しています。

短期的な予測にとどまらず、中長期のトレンドを把握するためにも重要です。

機関名	2024年GDP成長率予測
IMF	3.1％
世界銀行	3.0％
OECD	2.9％

トルコリラに対する投資戦略とリスクヘッジ法

トルコリラ建て資産への分散投資の考え方

分散投資はリスク管理の基本です。トルコリラ建て資産もその一部として取り入れることで、ポートフォリオ全体の収益バランスを取ることが可能です。

先進国通貨と併用した為替分散
資産ごとのボラティリティを確認
一資産に集中しない比率設計

ETF・投資信託を使ったリスク分散法

個別のトルコ資産に直接投資するよりも、ETFや投資信託を活用することで分散性と流動性を両立できます。

ファンド名	主な特徴
iShares MSCI Turkey ETF	トルコ大型株を中心に分散投資
トルコ国債インデックスファンド	長期金利とリラの動向に連動

FXでのスワップ狙い戦略と注意点

トルコリラはスワップポイントが高いことで知られています。ただし、為替損失リスクが大きいため注意が必要です。

高金利通貨だからといって安易に長期保有すると、逆に元本割れの危険もあります。

スワップポイントの変動に注意
短期的な価格変動に備えた逆指値注文
レバレッジのかけすぎに要注意

トルコ株・トルコ国債など現地資産の魅力

トルコ株やトルコ国債は、高成長市場としての可能性を秘めています。現地企業の業績や政府の財政運営に注目すると良いでしょう。

トルコ株式市場（BIST100）は内需回復で上昇傾向
国債利回りは10％超も存在
長期的な経済成長性と不確実性のバランス

為替ヘッジの有無によるリスク管理法

為替ヘッジを行えばリスクは抑えられますが、その分コストもかかります。投資期間や通貨のボラティリティを見極めることが重要です。

投資スタイル	為替ヘッジの有無
短期トレード	基本的にヘッジなし
長期保有	ヘッジ付きで安定運用

よくある質問（FAQ）

トルコリラの今後はどうなると思いますか？

現状では、インフレ率の高さと地政学リスクを背景に下落基調が続いています。IMFの予測でも、2025年末までに安定する可能性は限定的とされています。

2024年6月時点：1ドル＝32リラ台
中央銀行の利上げ効果は限定的
政治的安定が重要な鍵

ウクライナ情勢が収束すればトルコリラは回復しますか？

短期的な安心感は生まれるかもしれませんが、国内要因が大きく影響するため、即座の回復は難しいと考えられます。

情勢	リラへの影響
戦争継続	不安定なリラ安が続く
戦争収束	一時的な安定だが根本的解決ではない

トルコリラと株価、投資するならどちらが有利？

株価のほうが安定的な回復が見込まれる傾向にあります。通貨は金利と政策に左右されやすく、予測困難です。

株式：企業の業績次第で回復も期待可
リラ：スワップ魅力はあるが下落リスクが大
リスク許容度によって選択を検討

スワップポイントが高いのは魅力ですか？

確かにトルコリラのスワップポイントは高水準ですが、為替損による元本割れのリスクも伴います。

実際に年利10％超のスワップ益を得た一方で、為替差損により損失となったケースも少なくありません。

トルコリラ建て投資のおすすめ商品はありますか？

安定性を重視するなら、ETFやヘッジ付き投資信託が適しています。個別通貨の購入よりリスクを抑えられます。

iShares MSCI Turkey ETF
トルコ国債インデックスファンド
為替ヘッジ付きのMMF商品など

トルコ中央銀行の政策変更はどう読めばいいですか？

市場が注目するのは、金利決定とその背景にあるインフレ見通しです。特に会合後の声明文がポイントとなります。

政策変更	市場の反応傾向
利上げ	一時的にリラ高・株安
利下げ	リラ安・株高の可能性

まとめ：トルコリラの行方は「多面的な視点」で読み解くべき

トルコリラの今後を見極めるには、通貨単体の変動要因だけでなく、政治・経済・外交など多方面からの分析が必要です。

ウクライナ情勢や中東の地政学的リスクは、リラ安の外的要因となります。
インフレ率や政策金利、中央銀行のスタンスなど、内政の変動も大きな鍵です。
過去の暴落事例を知ることで、将来的なリスクヘッジの意識が高まります。
為替だけに頼らず、ETF・投資信託・株式など多様な商品を使った戦略が重要です。
FAQでは多くの疑問を具体的に解消し、投資判断の参考となる情報を整理しました。

今後の動向は短期的には不安定さが続く可能性がありますが、正しい知識とデータをもとに冷静に判断すれば、チャンスも見えてきます。

感情的な売買やうわさに流されることなく、長期的な視点とリスク管理を徹底する姿勢が求められます。